骨粗鬆症になる方は女性のほうが多いのですが、これは閉経後にエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が低下して骨代謝のバランスが崩れてしまうことが原因です。
この治療薬として開発されたのがSERM(サーム)です。正確には、選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM:Selective Estrogen Receptor Modulater)と呼ばれます。
骨に対してエストロゲンのように働きますが、乳房や子宮に対してはどちらかと言うと”反”エストロゲン的に働く薬です。
骨粗鬆症に対する効果は、脊椎骨折のリスクを約半分に低下させ、特にビビアントは脊椎以外の骨折リスクも低下させます。
骨密度も1年で2%程度の増加が期待できます。
エビスタ(一般名:ラロキシフェン)とビビアント(一般名:バゼドキシフェン)の2剤があります。
いずれも1日1回内服します。薬価は1錠約60円(3割負担だと20円)です。
副作用で比較的多いのは、乳房の張りや顔のほてりなどです。数ヶ月で落ち着いてくることが多いです。
重い副作用は少ないですが、静脈血栓症には注意が必要です。入院や寝たきりの状態など長時間体を動かさない状況では内服を避けましょう。
ビタミンDの摂取量が十分でない場合は、ビタミンDを補充します。
足りているかどうかは血液検査で検査できます。
乳癌とSERM
SERMは乳癌の発生リスクを約半分に低下させることが報告されています。
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/e_index/bq17/
乳がんの治療薬でアリミデックス(一般名:アナストロゾール)を内服されている方は、乳癌の治療効果が低下してしまうため、SERMは併用しません。
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/y_index/bq11/
子宮体癌とSERM
SERMの一種で乳癌の治療薬として使用されるタモキシフェンは子宮体癌を増加させるリスクが報告されていますが、エビスタとビビアントでは明らかではありません。
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/y_index/bq2/
添付文書
エビスタ錠
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049952
ビビアント錠
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058862