治療

骨粗鬆症の治療

目次
1. 骨粗鬆症治療中の血液検査について
2-1. プラリア投与中に歯科で「抜歯」が必要と言われた方へ
2-2. 歯科の先生方へ/プラリア投与中患者の抜歯に対する当院の考え方
3-1. ビスホスホネート投与中に歯科で「抜歯」が必要と言われた方へ
3-2. 歯科の先生方へ/骨粗鬆症に対してビスホスホネートを投与中の患者さんの抜歯に対する当院の考え方

骨粗鬆症治療中の血液検査について

骨粗鬆症の治療薬は、骨の代謝やカルシウムのバランスに関わるものが多く、治療を安全に続けるために、血液中のカルシウムと腎機能を定期的に確認する必要があります。これまで当院では、主に75歳以上の方を中心に血液検査を行っていましたが、薬の添付文書の注意事項に沿って、今後は骨粗鬆症を治療中の方全員に「半年に1回」の血液検査を行う方針に変更いたします。なお、治療内容や体調によっては、医師の判断で追加の検査を行うことがあります。
参考資料はこちら

<骨粗鬆症治療薬と血清カルシウム>
血清カルシウムが高くなることがある薬
①活性型ビタミンD3(エルデカルシトール、アルファカルシドール)
②PTH(テリパラチド、フォルテオ、テリボン)
血清カルシウムが低くなることがある薬
①ビスホスホネート(アレンドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸)
②デノスマブ(プラリア)
③ロモソズマブ(イベニティ)

<骨粗鬆症治療薬と腎機能>
骨粗鬆症治療薬は、腎機能の程度によって使用できるかどうかや、投与時の注意点が変わります。さらに、一部の薬では治療中に腎機能が低下することがあるため、定期的な確認が重要です。

健診結果だけでは代用できません
区の健診で腎機能を測定していても、当院の診療時に結果をオンラインで確認できないことがあります。さらに、カルシウム値は健診項目に含まれないことが多いため、当院で血液検査が必要となります。なお、健診結果を紙でお持ちの方は参考になりますので、ご持参ください。

他院の検査結果があればご持参ください
他院で1か月以内に行った血液検査で、腎機能(クレアチニン、eGFR)、
アルブミン、カルシウム値が分かる結果があれば、当院の検査の代わりとして参考にできます。受診の際に、検査結果(紙またはスマホ)をご持参ください。

プラリア投与中に歯科で「抜歯」が必要と言われた方へ

骨粗鬆症に対してプラリアで治療されている方が、歯科で「抜歯が必要です」と言われることがあります。

その際に大切なのは、ご自身の判断でプラリアを延期したり、中止したりしないことです。

プラリアを使っている方では、まれに抜歯後にあごの骨の治りが悪くなることがあります。頻度は高くありませんが、抜歯をした方のうち1%前後とする報告があります。

一方で、プラリアは投与の間隔が数か月単位で延びてしまうと、骨折しやすくなるおそれがあることも知られています。

そのため、抜歯が必要になった場合は、「薬を止めるかどうか」だけで決めるのではなく、歯の状態や治療の緊急性をみながら判断することが大切です。

当院では、次のように考えています。

・痛みや腫れがあり、早めに抜歯が必要な場合は、その時期を優先します
・急がない抜歯であれば、プラリア注射のあと3〜5か月の時期を目安に相談します
・抜歯後は、歯科の先生に傷の治り具合を確認していただき、問題ないと判断された時点でプラリアを投与します
・歯科治療が長くかかる場合は、必要に応じて別の治療方法を検討します

最終的には、抜歯を担当する歯科の先生のご判断を大切にしながら、患者さんご自身のご希望も確認し、個別に対応しています。

歯科で抜歯が必要と言われた場合は、自己判断で薬を止めず、まずは歯科の先生と当院へご相談ください。

歯科医療機関の先生方へ/プラリア投与中患者の抜歯に対する当院の考え方

骨粗鬆症治療として低用量デノスマブ(プラリア® 60mgを6か月ごとに投与)を投与中の患者さんにおいて、抜歯前に休薬を考慮すべきかどうかについては、現在も判断が分かれる場面があります。

当院では、国内外のポジションペーパー、骨粗鬆症治療ガイドライン、および薬剤特性に関する報告をもとに、次のように考えています。

日本口腔外科学会ほか6学会合同の「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」では、抜歯前の予防的休薬についてシステマティックレビューを行った結果、「抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案する(弱く推奨する)」と記載されています[1]。

その理由として、休薬によってMRONJ発症率が低下する明確な根拠が得られていないこと、また、感染を伴う歯を抜かずに経過を見ることで局所炎症が長引く可能性があることが挙げられています[1]。また同文書では、低用量デノスマブについて、薬理学的に投与後4か月頃から骨代謝抑制がやや弱まることを踏まえ、急を要しない抜歯では最終投与後4か月前後をひとつの参考時期とする考え方も示されています[1]。

米国口腔顎顔面外科学会(AAOMS)の Position Paper 2022 では、drug holiday の有効性について委員会内で見解が分かれており、現時点でも一定の結論には至っていないとされています[2]。そのうえで、最終投与から3〜4か月後に抜歯を行い、抜歯後6〜8週経過して創部治癒を確認してから次回投与を行う案が示されています[2]。

AAOMSでは、骨粗鬆症に対する低用量デノスマブ患者におけるMRONJ発症率を0.04〜0.3%、抜歯後のMRONJリスクを約1%と記載しています[2]。

Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme(SDCEP)2024でも、緊急性のない侵襲的歯科処置については、次回デノスマブ予定日の直前1か月程度で抜歯を行い、創部治癒を確認してから次回投与を行うことが勧められています[3]。当院では、臨床的には創部の上皮化と感染徴候の消失を確認することが、次回投与判断の目安になると考えています。

一方、骨粗鬆症治療の立場からは、数か月単位の投与遅延にも注意が必要です。Endocrine Societyのガイドラインでは、デノスマブについて drug holiday は推奨されておらず、6か月を過ぎて投与間隔が延びると、骨代謝マーカーの急速な上昇と骨量減少の加速という反跳現象(オーバーシュート)が示されています[4]。

以上を踏まえ、当院では次のように対応しています。

・疼痛、腫脹、排膿などがあり、歯科的に早めの抜歯が望ましい場合は、プラリア投与時期にかかわらず、必要な時期に抜歯をご検討ください
・急を要しない場合は、最終投与後3〜5か月程度を目安としてご検討ください
・抜歯後は、創部の上皮化と感染徴候の消失をご確認いただいた段階でご連絡いただけますと、次回投与時期を判断しやすくなります
・前回投与から7か月以上空く可能性がある場合は、当院で代替治療を検討します

当院としては、抜歯のためにあらかじめ休薬を前提とするのではなく、感染の状況を踏まえつつ、可能であれば投与後数か月の時期に抜歯を行う、という考え方を基本としています。

ご紹介・情報共有の際には、

・抜歯を急ぐ必要があるかどうか
・現在の感染所見や口腔内の状態
・抜歯前に消炎や口腔衛生管理の期間を要するかどうか
・抜歯後に創部の経過を確認する予定日

をご共有いただけますと、その後の投与時期を検討しやすくなります。

歯科の先生方と相談しながら、患者さんごとに無理のない形で対応していきたいと考えております。

【引用文献】
[1] 日本口腔外科学会ほか
薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf

[2] American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons
Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw Position Paper 2022
https://aaoms.org/wp-content/uploads/2024/03/mronj_position_paper.pdf

[3] Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme
Oral Health Management of Patients at Risk of MRONJ 2024
https://www.sdcep.org.uk/media/xtlp2uqx/sdcep-mronj-guidance-extant-2024.pdf

[4] Endocrine Society Clinical Practice Guideline
Pharmacological Management of Osteoporosis in Postmenopausal Women
https://www.endocrine.org/clinical-practice-guidelines/osteoporosis-in-postmenopausal-women

ビスホスホネート投与中に歯科で「抜歯」が必要と言われた方へ

骨粗鬆症に対してビスホスホネート(アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸など)で治療されている方が、歯科で「抜歯が必要です」と言われることがあります。

その際に大切なのは、ご自身の判断で薬を中止しないことです。

ビスホスホネートを使っている方では、まれに抜歯後にあごの骨の治りが悪くなることがあります。骨粗鬆症の治療として使われている場合、その頻度は0.05%未満とされていますが、抜歯をきっかけにやや高くなり、0.7%程度とする報告もあります。

ただし、ビスホスホネートは骨に長くとどまる性質があるため、短期間だけ薬を休んでも、抜歯後のリスクがはっきり下がるとは限りません。

そのため、抜歯が必要になった場合は、「薬を止めるかどうか」だけで決めるのではなく、歯の状態や治療の緊急性をみながら判断することが大切です。

当院では、次のように考えています。

・痛みや腫れがあり、早めに抜歯が必要な場合は、その時期を優先します
・急がない抜歯であっても、短期間の休薬を前提にせず、歯の状態と骨粗鬆症の治療状況をあわせて相談します
・抜歯後は、歯科の先生に傷の治り具合を確認していただき、今後の治療方針を検討します
・ビスホスホネートの使用期間が長い場合などは、必要に応じて今後の骨粗鬆症治療を見直します

最終的には、抜歯を担当する歯科の先生のご判断を大切にしながら、患者さんご自身のご希望も確認し、個別に対応しています。

歯科で抜歯が必要と言われた場合は、自己判断で薬を止めず、まずは歯科の先生と当院へご相談ください。

歯科医療機関の先生方へ/骨粗鬆症に対してビスホスホネートを投与中の患者さんの抜歯に対する当院の考え方

骨粗鬆症治療としてビスホスホネート製剤(アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸など)を投与中の患者さんにおいて、抜歯前に休薬を考慮すべきかどうかについては、現在も臨床現場で判断が分かれる場面があります。

当院では、国内外のポジションペーパー、骨粗鬆症治療ガイドライン、および代表的な臨床研究をもとに、次のように考えています。

日本口腔外科学会ほか6学会合同の「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」では、抜歯前の予防的休薬についてシステマティックレビューを行った結果、「抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案する(弱く推奨する)」と記載されています[1]。

その理由として、休薬によってMRONJ発症率が低下する明確な根拠が得られていないこと、また、感染を伴う歯を抜かずに経過を見ることで局所炎症が長引く可能性があることが挙げられています[1]。

米国口腔顎顔面外科学会(AAOMS)のポジションペーパー2022でも、骨粗鬆症に対するビスホスホネート投与患者におけるMRONJ発症率は0.02〜0.05%とされており、経口ビスホスホネートでは0.05%未満、静注製剤でも0.02%未満とされています[2]。一方、抜歯後にはリスクが上昇するものの、短期休薬による明確な予防効果は示されていません[2]。

ADA(American Dental Association)も、骨粗鬆症に対するビスホスホネート投与患者について、歯科処置のたびに休薬を行う十分な根拠はないとしています[3]。

一方で、ビスホスホネートは骨に長期間残留するため、短期間の休薬によって局所への作用が大きく変化するとは考えにくいことも、休薬の有効性が限定的とされる理由のひとつです。

Hasegawaらの多施設後ろ向き研究では、経口ビスホスホネート投与患者の抜歯において、術前休薬の有無とMRONJ発症率との明確な関連は示されませんでした[4]。

Shudoらの前向き研究では、長期経口ビスホスホネート投与例では抜歯窩治癒が遅れる傾向が示されましたが、顎骨壊死そのものは高頻度には認められていません[5]。

一方、骨粗鬆症治療の立場からは、ビスホスホネートには一定条件下で休薬という考え方があります。Endocrine SocietyおよびAACEのガイドラインでは、経口ビスホスホネートでは5年程度、静注ゾレドロン酸では3年程度の治療後に骨折リスクを再評価し、

・新規脆弱性骨折がない
・骨密度が安定している
・Tスコアが−2.5(YAM 70%)を上回る
・高齢、椎体骨折既往、ステロイド使用などの高リスク因子が強くない

場合には、一時的な休薬を検討しうるとされています[6][7]。

以上を踏まえ、当院では次のように対応しています。

・疼痛、腫脹、排膿などがあり、歯科的に早めの抜歯が望ましい場合は、休薬の有無にかかわらず必要な時期に抜歯をご検討ください
・急を要しない場合でも、短期間の休薬を前提とせず、感染状況と全身の骨折リスクを踏まえて判断します
・抜歯後は、創部の上皮化と感染徴候の消失をご確認いただいた段階で、その後の骨粗鬆症治療方針を検討します
・長期投与例で休薬を考慮する場合は、骨折歴、骨密度、投与期間をもとに当院で再評価します

当院としては、抜歯のために必ず休薬を行うという考え方ではなく、感染源となっている歯を必要以上に長く残さず、全身の骨折リスクと局所の治癒を両立させることを基本としています。

ご紹介・情報共有の際には、

・抜歯を急ぐ必要があるかどうか
・現在の感染所見や口腔内の状態
・抜歯前に消炎や口腔衛生管理の期間を要するかどうか
・抜歯後に創部の経過を確認する予定日

をご共有いただけますと、その後の治療方針を検討しやすくなります。

歯科の先生方と相談しながら、患者さんごとに無理のない形で対応していきたいと考えております。

【引用文献】
[1] 日本口腔外科学会ほか
薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf

[2] American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons
Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw Position Paper 2022
https://aaoms.org/wp-content/uploads/2024/03/mronj_position_paper.pdf

[3] American Dental Association
Osteoporosis Medications and Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw
https://www.ada.org/resources/ada-library/oral-health-topics/osteoporosis-medications

[4] Hasegawa T, et al.
Can primary wound closure and a drug holiday really prevent MRONJ after tooth extraction in patients receiving oral bisphosphonates?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28451732/

[5] Shudo A, et al.
Long-term oral bisphosphonates delay healing after tooth extraction
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29967931/

[6] Endocrine Society Clinical Practice Guideline
Pharmacological Management of Osteoporosis in Postmenopausal Women
https://www.endocrine.org/clinical-practice-guidelines/osteoporosis-in-postmenopausal-women

[7] AACE/ACE Clinical Practice Guidelines 2020
https://pro.aace.com/sites/default/files/2020-05/Vol%2026%20Supplement%201%20%28May%202020%29%20GL-2019-0524_0.pdf