コラム

レントゲンに写る黒い影の正体

レントゲンをご覧になった方によく聞かれるのが「この黒い影は何ですか?」という質問です。
まず、ご安心ください。ほとんどの場合、お腹であれば消化管のガス、骨であれば骨のう胞で、ガンではありません。
今回は、関節の中や背骨の椎間板に黒い影が見えたときのお話をいたします。
通常、レントゲンでは空気の入っているところは黒く写ります。
このため、肺の大部分や腸のガス(下図)は黒く見えます。

一方で、関節の中は普通は関節液で満たされていますし、背骨の椎間板は軟骨ですき間なくつながっています。
たまにこの部分に黒い影が見える、すなわち空気が入っていることがあります。

肩関節のCTで、肩を上げた位置では9%に関節内ガスを認め、下げた位置ではほぼ消失していたため、症状との因果関係はないのではないかという報告があります。

一方で、椎間板に空気が見える現象はバキューム現象と呼ばれますが、腰痛、椎間板の高さの低下、腰椎すべり症との関係を示唆する報告もあります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Emerg+Radiol+(2016)+23%3A377–382

いずれにしても、レントゲンで黒い影がある=悪い病気かも!と深刻に捉えなくてよいようです。

骨や関節のレントゲンを見て疑問に感じた点は整形外科医にご相談ください。

【参考文献】
Ito Haruhiko, et al. Radiation Medicine, 2008
腕の位置に関連した肩関節と胸鎖関節における関節内ガスのMDCTによる実証(MDCT demonstration of intraarticular gas in the glenohumeral joint and sternoclavicular joint with reference to arm position)

喜久生 健太ほか、中部日本整形外科災害外科学会雑誌、2008
腰椎椎間板内バキューム現象はいかなる臨床的意義を持つか?