コラム

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)~ガイドラインの解説~

上腕骨外側上顆炎について日本整形外科学会が作成したガイドライン(2019年版)をもとにQ&A形式で解説します。

Q1. どのような病気ですか?

A1. 手を前に出し、手のひらを下に向けて手首を上に反らせてみましょう。上腕骨外側上顆炎は、その動作(手関節の背屈:手の甲を反らす動作)を行う筋肉(主に短橈側手根伸筋と長橈側手根伸筋)が、肘の外側にある骨の出っ張り(上腕骨外側上顆)に付着する部分に炎症や損傷が起こる病気です。一般的に「テニス肘」と呼ばれていますが、これはテニス愛好家に多く見られたことからそう呼ばれるようになっただけで、テニスをする人に限らず、日常生活や仕事で手や腕をよく使う人に多く見られます。

Q2. どのような人がなりやすいですか?

A2. 好発年齢は30歳代後半から50歳代です。男女差ははっきりしていません。以下のような方が発症しやすいとされています。

ラケットスポーツ(テニス、バドミントンなど)をする人
前腕を回内(手のひらを下に向ける)した状態で手に力を入れて作業する人(ドライバーを回す作業、パソコンのマウス操作、調理作業など)
重労働者
肥満傾向の人
糖尿病がある人

Q3. どのような症状が出ますか?

A3. 肘の外側の痛み(押すと痛い)が主な症状です。痛みの程度は、物を持ち上げる際に感じる程度の軽い痛みから、安静時にもズキズキと痛む激しい痛みまで様々です。痛みは肘の外側だけでなく、上腕や前腕にかけて広がることもあります。

物を持ち上げたり、ドアノブを回すなどの動作でよく痛みます
手首を反らす動作(手関節背屈)や中指を伸ばす動作で痛みが増強します
握力が低下することがあります
悪化してくると安静時にも痛みを感じることがあります

Q4. 原因は何ですか?

A4. 主な原因は、手首を反らす動作の繰り返しによる腱の微小な損傷の蓄積です。特に、物を握りながら手首を反らす動作を繰り返すことで、腱に負担がかかり、炎症や損傷が生じやすくなります。また、加齢による腱の変性も発症の要因となります。具体的には、以下の動作が原因となりやすいです。

手首を反らす動作の繰り返し
手首を回す動作の繰り返し
物を持ち上げる動作
強く握る動作

Q5. 病院ではどのような検査をしますか?

A5. 病院では、主に以下の検査を行います。

身体所見:肘の外側の圧痛の確認、手関節背屈テスト(Thomsenテスト:手首を反らせた状態で抵抗をかけるテスト)、中指伸展テスト(中指を伸ばした状態で抵抗をかけるテスト)などを行います。
画像検査:
X線検査:骨の変形や石灰化の有無を確認します。
MRI検査:腱や関節の状態を詳しく調べます。
超音波検査:腱の腫れや肥厚、石灰化などを確認します。

Q6. どのような治療法がありますか?

A6. 治療法には、保存療法と手術療法があります。

保存療法:

薬物療法:痛み止め(内服薬、塗り薬)を使用します。
ステロイド注射:炎症を抑える効果があり、短期的に痛みを抑えることができますが、長期的な効果は期待できません。
テニスバンド・手関節装具:肘への負担を軽減する目的で使用します。
理学療法:ストレッチ、筋力トレーニング、マッサージなどを行い、症状の改善を目指します。
体外衝撃波治療:患部に衝撃波を照射することで、痛みの軽減や組織の修復を促す治療法です。近年、テニス肘に対する有効性を示す報告もありますが、保険適用外となります。費用は医療機関によって異なりますので、お問い合わせください。
多血小板血漿(PRP)注射:患者自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を患部に注射する治療法です。成長因子などが豊富に含まれており、組織の修復を促進する効果が期待できます。ステロイド注射よりも長期的な効果が期待できますが、保険適用外となります。費用は医療機関によって異なりますので、お問い合わせください。
手術療法は、保存療法で改善しない場合に検討されます。

Q7. 治療期間はどのくらいですか?

A7. 治療期間は、症状の程度や治療法によって異なりますが、数週間から数ヶ月かかることが多いです。保存療法で改善しない場合や、日常生活に支障がある場合は、手術療法を検討することもあります。

Q8. 治療後の再発はありますか?

A8. どの治療法でも再発の可能性はあります。特にステロイド注射は、短期的な効果はありますが、再発しやすいことが報告されています。再発を防ぐためには、日常生活での注意やリハビリが大切です。

Q9. 日常生活で気をつけることはありますか?

A9. 日常生活では、以下のことに注意しましょう。

腕や手首の使いすぎを避ける。
重いものを持つときは、肘に負担がかからないように注意する(肘を伸ばして持たないなど)。
手首を反らす動作をできるだけ避ける。
作業前にストレッチをする。
テニスバンドや手関節装具などのサポーターを使用する。
パソコン作業は適切な姿勢で行い、こまめな休憩を取る。

Q10. 予防のためにできることはありますか?

A10. 予防のためには、以下のようなことを心がけましょう。

運動前後のストレッチをしっかり行う。
腕や手首の筋肉をバランスよく鍛える。
作業中に適度な休憩を挟む。
正しいフォームで運動や作業を行う。

ーーーーーーーーーーーーーーー

当サイトで提供している情報は、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受け、適切な治療を受けてください。