コラム

血友病性関節症

血友病とは

血友病は、出血を止める血液凝固因子が生まれつき不足している病気です。そのため、ケガや打撲などで出血をすると、血が止まるまでに時間がかかります。

ひとの身体には12種類の凝固因子がありますが、そのうち第VIII(8)因子が不足している場合を血友病A、第IX(9)因子が不足している場合を血友病Bと呼んでいます。

2021年5月31日時点で日本には約7千人の血友病患者さんがいて、約80%が血友病A、約20%が血友病Bと報告されています。

血友病の方が生活していくにあたり、大きな問題となるのが関節の病気です。運動だけでなく、普段の生活でも簡単に出血してしまうため、生活の質を下げる大きな原因となっています。

血友病性関節症とは

血液凝固因子の不足により関節内出血を繰り返すことで滑膜炎を起こし、関節破壊を生じるものを血友病性関節症と言います。

血友病でみられる出血部位は、関節が70%、筋肉や皮下組織が20%、脳や脊髄が5%程度と、関節が圧倒的に多くなっています。関節の中では、膝45%、肘30%、足関節15%で、肩・手関節・股関節が各数%です。

関節内で何度も出血するとヘモジデリンという血液由来の鉄成分が関節内に蓄積して関節の滑膜を刺激します。

炎症を起こした滑膜は出血を繰り返しながら炎症性物質をつくるようになり、関節軟骨を破壊していきます。このように悪循環におちいった関節はTarget Joint(標的関節)と呼ばれます。

標的関節は出血後の安静のために運動が制限され、関節自体も破壊されることで関節の可動域が狭くなります。また、出血を怖れて運動を避けることで周りの筋力も衰えてしまい、更に関節への負担が増してしまいます。

生涯健やかな関節を保つために

1.定期補充療法や運動前の予備的補充療法を徹底して関節内出血を予防しましょう
2.関節内出血が起こったらすぐに補充療法を行いRICE処置を行いましょう
※ RICE処置:安静、アイシング、包帯での圧迫、患部を心臓より高く挙げておく
3.普段は運動して筋力をつけ、関節可動域を広げるストレッチをしましょう

お薦めできるスポーツ

足への衝撃が強くないもの:ウォーキング、水泳、自転車、ゴルフ、太極拳

お薦めできないスポーツ

誰かとぶつかるスポーツ:ラグビー、柔道、ボクシングなど

近年の補充療法の進歩により肘や膝関節の障害はほとんど見られなくなりました。しかしながら、足関節は出血を起こしやすいため、足への衝撃が強いスポーツはお薦めされません。人生の楽しみとリスクを天秤にかけて相談しましょう。

血友病性関節症の進行予防にはリハビリテーションが大切です。
進行すると怖い病気ではありますが、「正しく恐れる」手助けを整形外科がいたします。